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2016年2月15日 (月)

戦後を振り返って第22話

戦後を振り返って第22話2016年2月14日 戦後を振り返って第22話    

   民主主義政治の崩壊と長銀抹殺の誤り是正について(2)

前稿において長銀に関しての政治の混迷とそれに続く施策の概要をのべたが、この問題は 複雑な経緯をたどるので、あらためて詳しく検討して見る。

この問題が起きてから18年経っているが、その間を振り返って中に誤りがあればそれを糾すのが政治であると思われる、その観点から事の経過を詳しく検討してみる。

1、 時系列的な長銀問題

(1)平成10年10月16日 金融再生法が成立(法律第132号金融機能の再生のための緊急措置に関する法律)

(2)平成10年10月23日 同法により長銀は特別公的管理銀行とされた、すなわち国営長銀となった。

(3)平成10年10月28日 預金保険機構によって長銀の全株式24億1707万株は収用(没収)された。 この時預金保険機構の通知文には 株主は「後に株価算定委員会が株価を決定した時はその対価を請求する事が出来る」と記載されてあった。

(4)平成10年12月15日に金融再生委員会は株価算定委員会に長銀株価の算定を諮問した、ただしこの時にこの算定基準として「特段の事情の無い限り長銀を清算するものとして」すべての資産及び負債を評価すると云う前提が付けられた。

( コメント 1 ) 上記(4)の清算するものとしてという前提は平成10年10月28日の全株収用のときには無かった条件であり、それは平成10年12月15日の官報号外で公示された金融再生法施行規則であった。
これは上記(3)の全株収用の時に長銀株主に与えた対価支払い請求権を詐害するものであり、清算するとすればそれは権利者長銀株主を害する事は容易に予見することが出来る事であるので民法第424条により詐害行為として取り消し得る行為なのである。 (なお会社の清算とは「法人が解散して財産の整理を為す手続きを云う、また会社の法律関係の結了及び財産の処分を為す行為」と法律学辞典に書かれている。
この平成10年時点で 長銀の清算の問題が出た時、その財産の内長銀の保有株式の処分につき証券業界からそれは不可能、それは証券業界、金融界の壊滅となるとの意見が出て居た.一銘柄億株単位から百万株単位等の株式を処分する事が出来るか否かは  経済界に居る者なら常識であった。
長銀の保有株式は後の株価算定委員会の報告では評価額2兆8746億円であったが、それを見るまでも無く長銀の保有株式を処分して清算すると法律の施行規則に規定する事自体常識外れなのである。 この経済界の実状を無視した条件付けから問題は発展して行く)

1-⑤株価算定委員会はこの諮問に不審を抱きながらも平成11年3月30日に 長銀の普通株の対価、第2回優先株の対価共に 一株0円と報告した (株価算定委員会は長銀を清算するものとしてと云う前提を不審に思ったのであろう、報告書の末尾17ページに継続企業の前提で算出した純資産の額は1569億91百万円であるという表を付けて居る。 このような出だしから問題を抱えた長銀抹殺は進んで行く

2、 国が国営長銀をリップルウッド社を核とする投資組合に譲渡(国はこの様に言う)する経緯(日本経済新聞の記事) 平成11年9月28日に金融再生委員会はこの譲渡を決定して翌日に新聞発表した。

(1) リップルウッドは国が保有する長銀株を10億円で買い取る

(2) 長銀資産を再査定し、国が貸し倒れ引当金3000億円~5000億円を積み増す

(3) 本来は長銀の債務超過の穴埋めに使われるはずの長銀保有株の含み益2500億円強を実現し、新長銀の資本に組み入れる

(4) 譲渡後3年以内に2割以上価値が目減りした債券は預金保険機構が買い戻す。 これらの公的支援の引き換えとして契約には譲渡後3年間は資産の売却や急激な回収を行わない旨を付ける

(5) 98年3月に公的資金で投入した優先株の70%の1000億円を新長銀に継承させる

( コメント 2 )

この発表は国民に対する虚偽の発表である、それはその後に新生銀行のホームページでは国営長銀から新生銀行への社名変更、代表者変更であると記載している。したがって設立は昭和27年12月(長銀設立の日)を記載している。 上記2-(1)の10億円というのは24億1707万株の会社の譲渡金額とは到底思えないこれは社名変更と営業権を引き継ぐ承諾料であったであろう。 また譲渡であったならば長銀保有の株式類2兆8746億円分はどうなったか、これは後に新生銀行に移された事が明らかになって居る、これが譲渡されたのならば膨大な譲渡所得の税問題がでるはずであるがその気配も無い。 この新生銀行への移行を特に問題にするのでは無い、社名変更ならばそれで良いと思う、ただ国が虚偽の発表をするのは何かと問うのである。  もう一つの問題は株価算定委員会が0円と決定した長銀株を国が価額をつけて新生銀行の株式とし、これをもとにして新生銀行の4億6916万株の株主となって居る事。 株主平等の原則を踏みにじる行為である。  

以上が長銀抹殺劇の第1幕である、それは政治による長銀の退場は止むを得なかったとしても,退場させる方法に問題があった、会社清算という不可能な事を株価算定の条件とした事によって長銀株は0円となった。 処がこの結果が却って政府が困る事になったのである、無価値の長銀株に勝手に値を付けて新生銀行の株式とすると云う魔術を使って新生銀行の筆頭株主となったのである。これがこれまでの経過である。

これから今後の第2幕、第3幕に進む、それは結論的な考察である。

3、 第2幕は長銀株式価額の再算定の要求である、それは株主平等の原則に戻ることである。 その方法は平成10年12月15日に加えられた「長銀を清算するものとして」という条件を外す事である。これは長銀の清算は不可能と云う事が特段の事情に当てはまることで容易に条件から外せると考える。 従って株価算定委員会に長銀が営業を継続するものとして株価を算定して貰うことになる。 なお長銀は平成10年10月のこの問題発生以来業務は休むことなく続けられ勿論清算される事は無く国営長銀として、また平成12年6月に新生銀行と行名が変わっても営業は続けられている。 したがって株価算定の時期をいつ時点とするかは、平成12年6月が基準となるであろうが、それ以後の営業継続を加味されたものであるべきと考える。

4、 つぎに第3幕としては長銀株主に対する補償である。 これは老婆心的な記述となるが、ここまで言わないとこの劇は終わらないので付記する。 ここで先ず考えるべきは、株主の内、国の1億株は除外される事である、それは上記2に示したとおり、すでに国が自ら対価をきめて新生銀行の筆頭株主の座を得ているからである。したがって24億1707万株から1億株差し引いた23憶1707万株が対象となる。

再算定された長銀株式の価額を株数に掛け,遅延損害金を付加したものを損害賠償金として各株主に支払えば良いのであるが、ここに長銀の特異性が出て来る。 それは巨大な株主が多い事でそれは日本の産業復興期に大資金の長期貸出しという社会的な使命から融資と同時に資本面でも日本の重大産業を支える使命的な役割を持ったため巨大資本の援助、すなわち株式保有での支援が続けられた。それが30年以上に亘って積み重なっての巨大な株式保有となっている。 1企業に対して億株単位から千万株単位という保有も少なくないのである。 これらの大企業に一時金で賠償をすることは常識的ではないし相手方も処理に困る事になるのではないか。

ここで考えられるのは長銀保有株2兆8746億円と評価されとものは一括して新生銀行に移されたのであるからそれはそのまま新生銀行側に在る筈である(これは平成11年以後に信託財産として別管理されているようであるが)、ただしこれに手を付ける事は出来ない。 然しこの資産は毎年配当所得を生みそれは1年に1800億円以上である(前記2-③の2500億円は1年半の数字であり、これから1年分は1800億円と見られ、その後の配当性向は向上している)、これがその後18年間積み上がっており、それは3兆 600億円以上となるが法人税を差し引いて2兆1400億円以上となるだろう。 そうするとこの配当所得はもともと長銀の投資活動の果実であり長銀株主とは縁の深いものであり今問題にしている長銀株主への補償の財源として新生銀行の同意が得られるのではないか。 そしてこの流動可能な資金で長銀株主への補償は充分の額に積み上がっているのである。

(株主に対する賠償のシュミレーシヨン)

仮に株価が一株500円と算定されたとした場合

 個人株主に対しては一時金 1億590万株×500円=630億円

          630億円+遅延損害金5%×18年=1207億円

 法人株主に対しては保有株式総額2兆8746億円を財団の元本としてその配当金から各会社に10%の配当金を毎年支払うことで5年で補償を終わる

       1年間の所要資金2兆8746億円×10%=2875億円   

        2875億円+遅延損害金5%×18年=5463億円   

     5年間の補償額

          5463億円×5=2兆5426億円 (5年目は3574億円)

 法人個人の補償総額 2兆6633億円 < 2兆1400億円+1260億円×5

  このシュミレーシヨンでは幾つかの想定数字を使っている、このように考えれば株主補償の財源があることを示したものである。

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここまでくれば長銀問題は一応幕を下ろすことになる、すべての問題が終わるわけではないが、一応経済的には決着がつくことになる。

現在は第1幕が終わった処で国は満足しているが他の一般株主は何等解決されていない、第2幕、第3幕に進む事によって国の政治の姿勢を糾した事が示される。

 18年前に長銀株主に補償するには余りにも金額が大きくてそれは出来なかった。故に無理な理由をこじ付けて補償を0とした。

然しその後18年の間に長銀の遺産が果実を生み、その年次収入だけで補償が可能となったのである。元本に手を付けなくても補償が可能になったのであるからこれを実行するべきなのである、18年遅れたがその分遅延損害金をつければ理論的に正当となる。

現自民党にとっては過去の自民党が残した付けの清算であるが、御苦労であるが、今が株主補償の財源が出来た好機ととらえて、この宿題を解決して頂きたいと思うのである。

                      (終わり 一長銀株主 久保田英三)  

   記 長銀関係 諸元

1 長銀株主

日本国         1億株

その他        23億17百万株

 (法人4715社  21億9110万株  

 個人30700人  1億2590万株    内外国人500人)

  合計          24億17百万株

2 長銀の最終純資産  1569億91百万円

3 長銀の保有株式  

株価算定委員会の平成11年3月30日の評価 2兆8746億円

4 新生銀行 (平成12年6月に国有長銀から新生銀行に改称)

資本金  5112億円

大株主 預金保険機構 2億6913万株(9,7%)

    整理回収銀行 2億株      (7,2%)

                               以上                                                

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